
北海道開拓の玄関口として明治から大正にかけて栄華を極めた小樽。その歴史を今に伝えるシンボルが小樽運河です。
かつては多くの荷舟が行き交い、北のウォール街と呼ばれるほどの経済発展を支えたこの場所は、現在ではその役割を終え、日本国内のみならず海外からも多くの人々が訪れる観光名所として再生されました。
緩やかにカーブを描く運河沿いには、当時のままの姿を残す石造りの倉庫群が建ち並び、どこか懐かしく、そして異国情緒あふれる風景を作り出しています。今回は、ただ通り過ぎるだけではもったいない、小樽運河の奥深い魅力をじっくりと歩きながら味わうためのポイントをご紹介します。
歴史の重みを感じる石造り倉庫群と散策路
小樽運河の魅力は、なんといっても運河沿いに整然と並ぶ重厚な石造りの倉庫群にあります。かつてニシン漁や物資の保管場所として活躍したこれらの建物は、木骨石造りという独特の建築様式で建てられており、北国の厳しい冬にも耐え抜いてきた強さを感じさせます。
現在はレストランや地ビール工房、ショップなどとしてリノベーションされ活用されていますが、外壁に残る風化した石の質感や、絡まるツタの様子からは、長い年月を経て刻まれた歴史の重みがひしひしと伝わってきます。
整備された散策路は石畳が敷き詰められており、歩くたびにコツコツと響く足音が旅の気分を盛り上げてくれます。日中に訪れれば、青い空と運河の水面に映り込む倉庫群のコントラストが美しく、絶好の写真撮影スポットとなります。
また、運河の端から端まで歩くとそれなりの距離がありますが、途中にはベンチも設置されているため、海からの風を感じながら休憩するのも良いでしょう。
かつての人々がどのような思いでこの運河を行き来していたのか、往時の活気に思いを馳せながら、ゆっくりと時間をかけて散策することをおすすめします。
ガス灯が灯る夕暮れ時の幻想的な世界
日が傾き始め、空が茜色から群青色へと変わるマジックアワーの時刻になると、小樽運河は昼間とは全く異なる幻想的な表情を見せ始めます。散策路に設置された63基のガス灯に自動点火されると、オレンジ色の温かみのある光が灯り、石造りの倉庫群を優しく照らし出します。
LEDの鋭い光とは異なり、ガス灯特有の揺らぎのある柔らかな灯りは、訪れる人々の心を落ち着かせ、ロマンチックな雰囲気を最高潮に高めてくれます。
特に冬の季節、「小樽雪あかりの路」のイベント時期などは格別です。降り積もった真っ白な雪にガス灯の光が反射し、運河全体が淡い光のベールに包まれたような光景は、寒さを忘れさせるほどの美しさです。
水面に揺れる街明かりを眺めながら、静寂に包まれた夜の運河を歩く時間は、カップルや夫婦での旅行はもちろん、一人旅で静かに物思いに耽りたい方にとっても、忘れられない特別なひとときとなるはずです。
近隣のレストランで食事を楽しんだ後の、夜風にあたる腹ごなしの散歩としても最適です。
ガラスとオルゴールの音色に誘われて
運河沿いの散策を十分に楽しんだ後は、運河から一本内陸に入った堺町通り周辺へ足を延ばしてみましょう。小樽は「ガラスの街」や「オルゴールの街」としても有名であり、運河のすぐ近くには数多くの工房や専門店が軒を連ねています。
明治時代の商家や倉庫を改装した店舗が多く、建物そのものを眺めて歩くだけでも歴史情緒を感じることができます。
ガラス工房に足を踏み入れれば、繊細な輝きを放つグラスやランプ、可愛らしい動物の置物などが所狭しと並んでおり、その透き通る美しさに思わず見とれてしまうことでしょう。
